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October 30, 2002
超ハードボイルド短編連載小説−ネコルゴ13 第2話「猫たちの宴」
人は何かを消し去ることはできない。消え去るのを待つしかない。
(村上春樹:「タクシーに乗った男」)
Scene1−九州F県H村
ネコルゴ13ことデュークねこ山はF県H村にある書斎兼別荘で夏の
休暇をとっていた。神経を張り詰めなければならない仕事の連続であ
るネコルゴにとってこの休暇のひと時が彼にとって唯一普通のねこに
戻れる時間なのである。
世界中に数多くある別荘の中でもこのH村にある別荘は特に彼のお気
に入りであった。というのもここH村はケータイも通じなければラジ
も入らないという山奥だからである。交通手段も自分で運転する車以外
では近づくことはほぼ不可能、鉄道も一応通ってはいるがおよそ3時間
に1本という恐るべき頻度で人の往来をことごとく拒絶しているかのよ
うな地理的条件が危険と背中合わせの彼にとってリラックスできる環境
を作り出していた。
言うまでもないことだが、彼は世界をまたにかける超一流のスナイパー
ねこであり、顧客も選べるほどいるが、敵もまた多い。彼の過去の仕事
によって人生を狂わされた者、彼を倒して名をあげようとする者など彼
を狙う輩は数多く、プライベートと言えども気の休まる時間は少ないの
である。
Scene2−別荘の寝室
ネコルゴは、仕事で疲れた身体を休めるのと同時に緊張の連続だった神
経を静めるため、寝室のベッドの中でねこ大好きフリスキーをつまみに、
世界最高級と言われるH村産のマタタビをふんだんに使ったマタタビ酒
をちびちびと飲んでいた。
その時である!窓の外から別荘の中の彼を目掛けて黒い影が2つ飛んで
きたのだ。ネコルゴはそのずば抜けた反射神経でその2つの影を間一髪
でよけると敵の死角である柱の影に転がり込んだ。なおも黒い影はネコ
ルゴの姿を探して寝室の中を飛び回っている。「あれは!」ネコルゴはそ
の2つの影がツバメであることを見破った。しばらくネコルゴが帰ってい
ない間にツバメは彼の別荘の軒先に巣を作り、子孫繁栄のために卵を産ん
でいた。そしてちょうどヒナが帰った次の日にネコルゴが別荘に来たため
ヒナを狙うノラねこと勘違いしてツバメはネコルゴを威嚇してきたのであ
る。
ネコルゴは敵の正体を見破りとりあえず安心したが、このままでは休暇が
台無しになってしまうという懸念に襲われた。誰であろうと自分の邪魔を
する者は許さない。それがネコルゴの揺ぎ無い信念でもあった。しかし相
手はネコルゴをスナイパーと知った上で闘いを挑んでいるわけではない。
ただ子育ての都合上、障害を排除しようとしているだけである。そこでネ
コルゴは共存共栄という名案を思いついた。ツバメに自分の別荘の軒先を
貸す代わりに敵の襲来をいち早く発見できるツバメに情報を提供してもら
うのである。
ネコルゴはこの名案を相手に伝えようとしてツバメに近寄ろうとするがそ
れを見たツバメはさらに激昂してネコルゴを威嚇しようとネコルゴの尻尾
や耳をくちばしで攻撃してくるのである。そしてついにネコルゴの堪忍袋
の緒を切らす事件が起きたのだ。ツバメは2匹できりもみ飛行をしながら
ネコルゴに接近するとネコルゴの頭上で交差し、その瞬間う○こをしたの
である。その2匹のう○こはツバメの飛行速度とあいまって時速60キロ
のスピードでネコルゴの頭に命中した。そしてケケケケと高笑いを残して
2匹のツバメは山の向こうの方に消えてしまったのである。
「許せん!」ネコルゴは自ら闘いを挑むことはないが相手から先制攻撃を
仕掛けられた場合は直ちに迎え撃つことにしているのである。彼は神経を
研ぎ澄まし、ツバメの次の攻撃を待った。そして2分後にツバメが再び姿
を現したとき、ネコルゴは目にも留まらぬ早わざでねこパンチを放った。
そして、ネコルゴのねこパンチを首筋に受けたツバメは白目を向いて床の
上にひらひらと落下してきたのである。
「ふう、危機一髪だったな。」ネコルゴが自分の技のあまりのキレのよさに
感慨にふけっているそのときである!今度は、屋根裏からブーンと地鳴りの
ような音が聞こえてきた。そして部屋の中に黒い点が無数に散らばっていっ
た。「あれは!!」そう、ネコルゴが別荘を留守にしていた間、屋根裏には
ミツバチが巣をたくさん作っていたのである。そしてネコルゴとツバメとの
闘いの物音に反応してミツバチが来襲してきたのである。ブーン、ブーン。
「うわっ、これはたまらん!」たまらずネコルゴは窓から外に飛び出して
別荘を振り返ってみた。すると、無数のミツバチとツバメが別荘の上を旋回
していたのである。
そう、ツバメとミツバチは共同戦線を結んでいたのである。そして一方が攻
撃されたとき、もう一方がその相手を攻撃するという密約を結んでいたのだ。
すでに別荘の周りはミツバチとツバメの黒い陰に覆われており、ネコルゴが
別荘の中に入るのを許さなかった。ネコルゴが仕事で離れていた間に別荘は
すでにミツバチとツバメの手に落ちていたのである。「ふっ、あの別荘はく
れてやろう。」そう言い捨ててネコルゴは吸っていたマタタビをピン−と投げ
捨てた。
デュークねこ山、通称ネコルゴ13。本名、国籍、年齢全て不明。しかし裏の
世界では名の通ったスナイパーねこである。彼にとっては毎日が闘いの日で
ある。いつ彼に安息の日はやってくるのであろうか。
つづく。
投稿者 nekoyama : October 30, 2002 06:04 PM