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December 01, 2002

超長編大河小説 リアリスティックザサエさん 第2部

東は東、西は西。両者は出会うことがない。(キップリング)

やあ、僕ねこ山。
僕がイゾノ家から解放され、タマとガツオがイゾノ家を出て行ってから早や2ヶ月が経
とうとしている。よくも悪くもイゾノ家はガツオという存在によってその微妙なバラン
スを保っていたのであるが、ガツオがいなくなったことにより、そのバランスが崩れ、
イゾノ家は次々と新たな問題が浮上してきているらしい。これは、時々現地調査に赴く
タマからの情報である。

その日はイゾノ家にとってターニングポイントとも言うべき重大な事件が起こった日で
あった。午後6時半、いつもより早めに帰宅したナビヘイはうつろな目で居間に入ると
帽子を脱ぐことも忘れて、ちゃぶ台の前に腰を下ろした。「あらあら、お父さん、今日は
早いですね。」とブネ。しかし、ナビヘイは返事をしない。というよりは、ブネの言葉が
聞こえていないようだった。「お父さん、どうなさったんですか?」とブネが少し高い声
で言うと、「あ、ああ、母さん、何でもないんだ。それよりも、酒はあるか?」とナビヘ
イ。
「もうお酒ですか?まず、着替えてらっしゃったら?」とブネが言うと、「うるさい!酒
と言ったら酒だ!同じことを何度も言わすな!」とナビヘイは怒鳴った。「え、ああ、分
かりました。」と動揺するブネ。

すると、奥の部屋からダラちゃんが出てきて、「おじいちゃん、お帰りなさいでしゅ。」
とわざとらしく甘えた口調でナビヘイの膝の上に乗ろうとすると、ナビヘイは「ええい!
どかんか!このガキめ!」とダラちゃんを手で撥ね退けた。「ウェーン、ウェーン、おじ
いちゃんがぶったでしゅ!」とダラはザサエのところに走って行った。「まあ、どうした
のダラちゃん?」とザサエ。「おじいちゃんが僕をぶったでしゅ!」とダラちゃん。「お
父さん、どうしてダラちゃんをぶったりしたの!」とザサエがナビヘイに詰め寄る。「す
まん、ダラちゃん、ザサエ、母さん・・・」ナビヘイは急に神妙になった。「実は、会社
がアメリカ資本に乗っ取られて、リストラされたんだ。」「ええっー!」と3人。「なんで
も、グローバリズムとかで株式を店頭公開したとたん、前前から目をつけていたアメリ
カの投資会社が、うちの株の過半数を買い占めて、株主総会で取締役を全てアメリカ人
に変えてしまったんだ。」ナビヘイは、涙を流していた。

「そして、今日、新代表取締役というアメリカ人がやってきて、わしの肩を叩いてこう
いったんだ。『へイ、ミスターイゾーノ、アナタハ明日カラ来ナクテイイデース。』と。」
「『ウチノ会社ハ、コレカラ実力主義デ行キマース。アナタハ戦力外デース。』そして、
荷物をまとめさせられて会社から追い出されたんだ。」ナビヘイは溢れ出る涙をこらえき
れなかった。「すまん、母さん、ザサエ、ダラちゃん。これからわしはイゾノ家のお荷物
だ。」「何言ってるの、父さん。まだ蓄えもあるし、当分は大丈夫よ。その間ゆっくり次
の仕事を探せばいいじゃないの。」とザサエ。「そうですよ、父さん、まだ、マズオさん
だっているじゃないですか。」とブネ。「そうでしゅ。おじいちゃんはお荷物なんかじゃ
ないでしゅ。」とダラちゃん。「みんな、ありがとう・・」感極まって、ナビヘイはうっ
うっと泣いた。しかし、ダラちゃんは既に金づるではなくなったナビヘイにきっぱりと
見切りをつけていたのである。

「トリアエズ、なびへいノ会社ヲ乗ッ取ッテ奴ヲりすとらシテオキマシタ。」ととある事
務所の中である男が一人の少年に言った。「ごくろう。」と少年が答えた。「本当ニヨカッ
タノデスカ?アナタノ家族ヲりすとらスルナンテ。」と男。「なあに、構わないさ。彼ら
が本当に恐怖を味わうのはこれからだよ。これまで僕にしてきたことを後悔させるのさ。
ふっふっふ。」とその坊主頭の少年は男の方を向いて不敵に笑った。

つづく

投稿者 nekoyama : December 1, 2002 06:10 PM