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December 03, 2002

超長編大河小説 リアリスティックザサエさん その2

いいかい、誠実な仕事なんてどこにもないんだ。誠実な呼吸や誠実な小便がど
こにもないようにさ。(村上春樹:「羊をめぐる冒険」)

やあ、僕ねこ山。
ガツオとタマがいなくなった後のイゾノ家では、堰を切ったように様々な事件が勃発し
ているらしい。これも、僕がタマからメールで報告を受けたイゾノ家で起きたある事件
である。

ナビヘイが、会社をリストラされて早や2週間が経とうとしていた。その日の朝もイゾ
ノ家はいつもと変わりなくみんなで食卓を囲んでいた。「お父さん、今日も職安に行く
んですか?」とブネ。「ああ、蓄えがなくならないうちに次の仕事を見つけんとな。し
かし、この歳で再就職はやっぱりきついな。」とナビヘイ。「まあ、でも気長に探してい
ればそのうちいい職が見つかりますよ。」とマズオ。「そうだな、前向きに考えんといか
んな。それはそうとダラちゃんはまだ寝てるのか?」とナビヘイがザサエに言った。「え
え、あの子ったら最近なんかおかしいのよ。やっぱり、お父さんのリストラが子供心に
ショックだったのかしら。」とザサエ。「そうか、ダラちゃんのためにも早めに次の職を
探さんといかんな。さて、わしはそろそろ出かけてくるかな。」「あ、お父さん、僕も一
緒に行きますよ。」とマズオも席を立った。

「なあ、マズオ君、やっぱりこの歳で再就職は無理なのかな。」と駅までの道すがらナビ
ヘイがマズオに聞いた。「そんなことはありませんよ。お父さんは経理のエキスパート
なんですから、それを全面に出していけば強いと思いますよ。」とマズオは言った。「そ
うか、そうだな。前向きに考えるようにしよう。」とナビヘイ。「そうですよ、お父さん。
じゃ、僕はちょっと他社との打ち合わせがありますので。」と言って改札を出たマズオは
ナビヘイとは反対方向行きの電車に乗った。

マズオは4つ目の駅で降りると北口にある喫茶店に入って行った。そして、窓際に座っ
ている20代前半の女性を目に留めると近づいていって言った。「やあ、待ったかい?」
「ううん、私も今着いたところよ。」とその女性がマズオを見上げて言った。「おなかす
いちゃったなあ、君も食べてないんだろう?何か食べなよ。」とマズオ。「私はうちで食
べて来たわ。」と女。「そうかい、じゃあ、失礼して僕だけモーニングをいただこうかな。」
と言ってマズオはウエイトレスに注文をした。そして、マズオの朝食が終わり、2人は
喫茶店の外に出て行った。外に出ると女はマズオに身体を寄せ、腕を絡めようとした。
「おいおい、知ってる人に見られたら困るよー。」とマズオ。「こんな朝から知ってる人
に会うわけないでしょ。」と女。「それもそうだな。」とマズオは大胆にも女の腰に手を
回して2人は街の中へ消えて行った。

そして4時間後、マズオと別れたその女はとあるホテルに入って行き、喫茶室で煙草を
吹かしている人物の前に座った。「こんなもんでいいのかしら?」「ああ、上出来だよ。」
とその坊主頭の人物は煙草の煙をふーっと吐き出した。「これが、今回の報酬だ。」とそ
の坊主頭の人物はテーブルの上に万札が入った封筒を差し出した。女はその封筒を手に
取り中身を確かめた。「いつもこんなにもらっていいのかしら?」「ああ、構わないさ。」
と坊主頭の男。「じゃあ、また次の仕事の時にはこちらから連絡するよ。」と坊主頭の男
は煙草を灰皿でもみ消し、「さあ、行こうか。」「ニャーオ。」と言ってそばにいた白ね
ことともに喫茶室を出ていった。

つづく

投稿者 nekoyama : December 3, 2002 06:14 PM