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January 07, 2003

超長編大河小説 リアリスティックザサエさん その3

人生というものはどうしてこうがらりと様相を変えてしまうのだろう。
(村上春樹:「眠り」)

やあ、僕ねこ山。
ナビヘイのリストラや、マズオの不倫問題で崩壊寸前のイゾノ家にまたもや大事件が勃
発した。これも、いまだ行方が知れないタマからのメールによる報告である。

夏休みは既に終わったが、まだまだイゾノ家の暑い夏は終わる気配がなかった。その日
もいつもと同じように表面上はのどかな朝食の風景がイゾノ家にはあった。しかし、そ
の裏で得体の知れない何者かの手によってイゾノ家は蝕まれ、崩壊しようとしていたの
である。

「ごちそう様でした。」今日は珍しくワガメが外出しようと急いで朝食を済ませ、みんな
よりも先に家を出て行った。「いってきまーす。」続いて職安に行っているふりをしなが
ら競馬場に通っているナビヘイと仕事に行っているふりをしながら女性との逢瀬に余念
がないマズオも、二人で家を出て行った。「どうかね。最近、会社のほうは?」とナビ
ヘイ。
「えっ、ええ、ぼちぼちですね。」とどこか不自然にハンカチで額をぬぐうマズオ。「と
ころで、今日はワガメちゃん、早く出て行きましたね。」とマズオが話題を変える。「あ、
ああ、そうだな。図書館に行くとか行っていたな。」「へえーっ、そうか。もう、中間試
験前で追い込みですもんね。」とマズオ。そして、「今日も取引先と打ち合わせがありま
すから。」と言って、マズオはナビヘイと反対方向の電車に飛び乗った。

いつものようにマズオが若い女性と逢引を重ねている駅の反対側の南口ではワガメがフ
ァストフード店の店内で中年の男と会っていた。「おなかがすいただろう、何でも好き
な物を注文していいんだよ。」と男。「わあ、じゃああたしこれとこれとこれ!」とワガ
メは言った。「そうか、よしよし。じゃあおじさんはこれにしようかな。ワガメちゃん
注文してきてくれるかい?」と男。ワガメが注文し終えて帰ってくると男はカバンから
リボンのついた箱を取り出して、ワガメの前にそっとおいた。「開けてごらん。」「何だ
ろう、わあー、ステキー!私こういうのが欲しかったんだ!」とワガメは箱からワンピ
ースを取り出して顔を輝かせた。「ワガメちゃんにきて欲しいんだ。」と男。「ええー!
いいのー?おじさん、ありがとう!」とワガメ。そして、2人は朝食を終えると店から
出て、街の中へ消えて行った。

そしてその日の夕方、その男はワガメと待ちあわせた駅の南口の地下にあるバーに入っ
て行った。「こんなもんでいいのかな?」と男はカウンターに座ってバーボンを飲んで
いる坊主頭の男に言った。「ああ、上等さ。」と坊主頭の男が答えた。そして、坊主頭の
男は半ズボンの尻ポケットから万札が入った封筒を取り出し、横に座った男の前にすっ
と差し出した。男はその封筒の中身を確認してから「確かに。いつもこんなにもらって
悪いねえ。」と言った。「なあに、安いもんさ。奴らが俺に払う代償に比べればな。」そ
う言って坊主頭の男はくっくっくと笑った。「代償?」そう男が坊主頭の男に尋ねると、
「いや、何でもないんだ。こっちのことだよ。」と言って、カウンターの奥にいるマスタ
ーに「じゃあ、これ、この人の分も。」と言って、万札をカウンターの上に差し出した。
「釣りはいらないよ。じゃあ、行こうか。」「ニャーオ。」そう言って、坊主頭の男はく
っくっくと笑いながらバーを出て行った。

投稿者 nekoyama : January 7, 2003 06:17 PM