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January 31, 2003

ねこねこFA宣言

「問題は」と彼女は言った。「誰も本気で感動を求めていないことです。」
(村上春樹:「タクシーに乗った男」)

福岡市の岡野家に在籍しているねこ山選手は、今年のねこねこリー
グのシーズン終了を待ってFA宣言した。ねこ山選手は岡野家に
2001年の7月より在籍し、今年のシーズン終了までの13ヶ月間
のうちに、家の柱5本、ふすま2枚及び岡野氏の一張羅のスーツ
に爪をたて使い物にならなくしたほか、岡野家の食卓に並ぶ予定
であったちくわやから揚げを盗み食いし、さらに風呂上りの岡野
氏の足に噛み付き全治1日のケガをさせるなどバランスのとれた
活躍をし、今年のねこねこリーグのMVPに表彰された。
FA宣言をしたねこ山選手は、「現状に不満はないが、新しい環境
で自分を試してみるのもいいかもしれないと思った。選手生命は
短いので悔いのない選択をしたい。まずは、交渉代理猫を含めた
三者で自分と交渉してくれる家庭と話し合ってから決めたい。」と
語っており、交渉代理猫には前々よりねこ山選手の代理猫を務め
てきたミケ氏が就職することが決定している。
ねこ山選手に関しては国内外合わせて12家庭が関心を示している
と伝えられ、国内では北九州にあるフォトスタジオ・F○.が獲得
の意志を示しており、オーナーのK寺氏も、「ねこ山選手はおそら
くア○リカのメニャーリーグに行っても通用する実力の持ち主だと
思っているが、来年度は是非うちで活躍してほしい。」と語っている。
メニャーリーグには昨年、アメ○カ好みのパワープレイヤーである
ターミネーコー・ねこ島選手がニューヨークの家庭に移籍している。
ねこ島選手は家のパソコンや配管設備を破壊したり、わけもなく飼
い主に飛びかかって1週間入院させるなど、前評判どおりの活躍を
しており、待ち伏せやフェイントなどの頭脳的プレーを得意とする
ねこ山選手も史上2匹目の日本猫メニャーリーグ・プレイヤーとし
てその活躍に期待が高まっている。

投稿者 nekoyama : 06:21 PM

January 21, 2003

超長編大河小説 リアリスティックザサエさん その4

つまるところ人間は愛するものしか守ろうとしない。理解できるものしか愛そ
うとしない。そして、知っているものしか理解しようとしない。(アリストテレス)

やあ、僕ねこ山。
タマはすでにイゾノ家にはいないのだが、信頼できる筋を通じて情
報を仕入れているらしく今日も僕にイゾノ家の事情をメールで伝え
てきた。タマのメールによればイゾノ家ではなかなかすさまじいこ
とが起こっているらしい。

ナビヘイがリストラされてからすでに3ヶ月が経っていた。その間、
ナビヘイはハ○―ワークに行くふりをしながら競馬場や競艇に通っ
ていた。そして無目的に有り金をつぎ込み3ヶ月でおよそ50万円を
すっていた。そして、この日もナビヘイは一日で3万円をすってし
まいとぼとぼと家へ向かった。

「ただいま。」ナビヘイが何食わぬ顔で玄関を開けた。しかし返事
はなかった。「ただいま!」と今度はやや大きな声でナビヘイは言
った。「お、お帰りなさい。」と慌てた様子でブネが奥から出てきた。
「何をしてたんだ。わしが帰ってきたのも分からなかったのか?」
ナビヘイは少しイライラしながら言った。「え、ええ、ちょっと台
所にいたものですから。」と言いながらブネの目は泳いでいた。「ま
あいい。夕飯はできているのか?」とナビヘイはブネに聞いた。「あ、
あのそれが…」「なんだ?」とナビヘイ。「ご飯の前に少しお話があ
るんですけど。」とブネはナビヘイに言った。「なんの話だ?」をナ
ビヘイはぞんざいに答えた。「え、ええ、あの話と言うのは…」ブネ
は消え入りそうな声で言った。「だからなんなんだ!」とナビヘイは
イライラして答えた。
「お父さん、今日はどこへ行ってらしたんですか?」とブネがおど
おどしながらナビヘイにたずねた。「今日?今日はハロ○ワークに
行っていたに決まっているじゃないか。」とナビヘイは答えた。「じ
ゃあ、昨日は?」とブネ。「昨日も同じだ。」とナビヘイ。「じゃあ、
おとといは?」とブネ。「何度同じことを言わせるんだ!○ロー
ワークだと言っとろうが!」とナビヘイは怒鳴った。
「お父さん、あのですね…」とブネ。「なんだ!」とナビヘイ。「私、
今日用事があってお父さんを呼び出してもらおうと思ってハロー
ワー○に電話したんです。」とブネがまた小さな声で言った。「そ
したら、そんな人は来ていないってハロー○―クの人が…」「な
に?」とナビヘイがブネの顔を睨んだ。「どうしてお前はそんなこ
とをしたんだ!」とナビヘイがブネに向かって怒鳴った。「どうし
てって、お父さんに用事があって…」とブネが言いかけたその時
であった。「うるさい!」とナビヘイはブネの左頬を平手で打った。
「痛っ!」とブネは壁に叩きつけられた。「お前というやつはどう
して夫の行動をこそこそと探るような真似をするんだ!」とナビ
ヘイは壁に寄りかかったブネのボディに左フックを打ち込んだ。
「うぐっ!」と言ってブネはそのまま廊下に倒れこんだ。そしてう
つぶせになったまま「うう…」と声にならない声を出していた。「ま
ったくお前というやつは!」すでに激昂していたナビヘイは廊下で
丸くなっているブネの横腹を右足で蹴り上げた。「んがっ!」といっ
てブネは廊下に嘔吐した。そしてぜいぜい言っているブネの横腹を
ナビヘイはさらに蹴り上げた。「ぐっ!」と言ってブネはさらに嘔
吐した。その吐しゃ物の臭いと怒鳴り声に気づいたザサエが奥から
出てきた。「母さん!」と言ってザサエはブネを覆うように抱きつ
いた。「父さん!一体何してるの!母さんに暴力を振るうなんて!」
その声でナビヘイは我に帰った。「母さん!大丈夫!」とザサエは
ブネの体をゆすった。しかしすでにブネの意識はなく、口から吐
しゃ物を吐き出しながら痙攣していた。「わしは、わしは…」そう
いってナビヘイは玄関からすでに暗くなった外へ飛び出していった。
「救急車よ!ワガメ!救急車を呼んで!」ザサエの声が家を飛び
出したナビヘイの耳にかすかに聞こえた。

そしてその日の夜、ダークグレーのスーツを着た中年の男が駅の
横のガード下のおでん屋ののれんをくぐった。「えらっしゃい!」
と威勢のいい声がおでんの湯気の奥から聞こえてきた。そして、
中年の男はスーツの上着を脱ぐと先に来て焼酎を飲んでいた坊主
頭の男の隣に座り、「燻製卵と大根ね。あと、ビールを一本もらお
うか。」と言った。そして、隣の坊主頭の男に、「あんたの言うと
おり、イゾノ家に電話してナビヘイに連絡を取りたいので居場所
を教えてくれと聞いてみたよ。」中年の男がそう言うと、坊主頭
の男は「上出来だ。」と言って、中年の男のグラスにビールを注
いだ。そして、「もうそろそろだな。」と言ってくっくっくっと笑
った。「何がもうそろそろなんだい?」と中年の男が聞き返すと、
坊主頭の男は、「いや、何でもないんだ。」と言ってコップの焼酎
を飲み干し、トレンチコートを羽織り、そのポケットから札束を
取り出して、中年の男の前にそっとおいた。そして「少ないけれ
ど取っておいてくれ。それからここは僕が払うよ。」といった。中
年の男は「こんなにもらっていいのかい?」と驚いた顔で聞いた。
「いいんだよ。これでも足りないぐらいだ。」と坊主頭の男は言い、
またくっくっくっと笑った。そして、おでん屋の主人に勘定を済
ませると、「さあ、行こうか。」と言って、トレンチコートのベル
トを締め、そばにいた白い猫と一緒におでん屋を出て行った。お
でん屋の外にはすでに冬の風が吹き始めていた。

つづく

投稿者 nekoyama : 06:20 PM

January 16, 2003

ニャーベル賞続報

平和は力では保てない。(アルバート・アインシュタイン)

受賞者による正賞受賞辞退、しかも副賞(ねこ缶1年分)のみの受賞という異例の事態に
よって急遽新たな受賞者の審査に入ったスウ○―デンの王立ねこねこ科学技術アカデミー
は、今年度のニャーベル平和賞に日本のカータン氏を選んだと発表した。
カータン氏は、幼児向け教育番組「お○さんといっしょ」に出演し、そのユニークかつシ
ュールなスタイルで昭和時代の日本中の子猫たちのアイドルとして君臨していた。しかし、
時代が平成に変わるとともに子猫たちの趣向も多様化、同時に視聴率も低迷し、番組も打
ち切りとなり、カータン氏もブラウン管から遠ざかっていった。
しかし、その後、カータン氏は私財を全て投入してカータン財団を設立、子猫たちに夢を
与えるためのアイドル育成のための奨学金や、子猫たちの興味をそそるおもちゃの開発に
多額の私財を寄付するなどし、子猫の健全な育成のための基礎環境づくりに尽力しつづけ
ている。
子猫たちに夢を与えつづけたいというカータン氏の活動はニャーベル平和賞に値するとし
て今回の受賞となった。
受賞の知らせを財団の事務所で聞いたカータン氏は今回の受賞について、「非常に名誉な
ことで、大変うれしい。この受賞がこれからも多くの子猫たちに夢を与えつづけるもので
あってほしい。副賞のねこ缶一年分は全て世界の恵まれない子猫たちに寄付したい。」と
語っている。

ねこねこ大学客員教授・岡野ねこ山氏(社会評論)の話
今回のカータン氏の受賞は、氏の功績を考えれば当然の受賞と言える。氏の実直かつ崇高
な精神もあいまって今回の受賞に至ったと考える。以前、討論番組で氏と対談する機会を
得たが、そのシュールな格好とは裏腹に、氏の落ち着いた話ぶりから誠実な性格がうかが
われ、信頼に値する人物(動物)であると感じた。今回の氏の受賞を機に、世界平和のた
めに地道な努力をしている人々(猫々)にスポットライトがあたる機会が増えることを願
ってやまない。

投稿者 nekoyama : 06:19 PM

January 15, 2003

ニャーベル賞

もしも明日が世界の終わりだとしても、今日僕はリンゴの種を蒔こう。
(ゲオルゲ)

ス○ェーデンの王立ねこねこ科学技術アカデミーは、24日(日本時間25日)、ニャーベ
ル平和賞を、日本のターミネーコー・ねこ島氏に与えると発表した。ニャーベル平和賞は、
その年のねこ界の世界的平和活動に最も貢献したねこあるいは団体に与えられる。
ターミネーコー・ねこ島氏はねこ達の解放というスローガンを掲げて、2039年の未来か
ら現代にやってきており、人類の暴虐かつ傲慢な振る舞いからねこ族を守り、かつ全ての
動物たちに公平な社会を建設するという壮大な活動を行っている。
王立ねこねこ科学技術アカデミーは、ねこ島氏の受賞理由に関して、「昨今の人類(特に
ア○リカ)の傍若無人な活動が地球の環境の悪化、ひいては全ての生物の生存を危機に陥
れているとしたうえで、ねこ島氏によるねこ族解放活動が、人類のそのようなわがまま勝
手な振る舞いに一石を投じた。」と説明しており、超資本主義国家アメ○カの国際社会で
の傲慢かつ非礼な姿勢に痛烈な批評を下した。
しかしねこ島氏は、「私の活動は極めて個人(猫)的なものであり、特に世界平和の貢献
ということを意識したことはない。それが故にこのような賞をもらうのは忍びない。」と
して、ニャーベル賞の受賞を固辞している。しかし、副賞として与えられるねこ缶1年分
については、「受け取ることにやぶさかではない。」と語っている。

投稿者 nekoyama : 06:18 PM

January 07, 2003

超長編大河小説 リアリスティックザサエさん その3

人生というものはどうしてこうがらりと様相を変えてしまうのだろう。
(村上春樹:「眠り」)

やあ、僕ねこ山。
ナビヘイのリストラや、マズオの不倫問題で崩壊寸前のイゾノ家にまたもや大事件が勃
発した。これも、いまだ行方が知れないタマからのメールによる報告である。

夏休みは既に終わったが、まだまだイゾノ家の暑い夏は終わる気配がなかった。その日
もいつもと同じように表面上はのどかな朝食の風景がイゾノ家にはあった。しかし、そ
の裏で得体の知れない何者かの手によってイゾノ家は蝕まれ、崩壊しようとしていたの
である。

「ごちそう様でした。」今日は珍しくワガメが外出しようと急いで朝食を済ませ、みんな
よりも先に家を出て行った。「いってきまーす。」続いて職安に行っているふりをしなが
ら競馬場に通っているナビヘイと仕事に行っているふりをしながら女性との逢瀬に余念
がないマズオも、二人で家を出て行った。「どうかね。最近、会社のほうは?」とナビ
ヘイ。
「えっ、ええ、ぼちぼちですね。」とどこか不自然にハンカチで額をぬぐうマズオ。「と
ころで、今日はワガメちゃん、早く出て行きましたね。」とマズオが話題を変える。「あ、
ああ、そうだな。図書館に行くとか行っていたな。」「へえーっ、そうか。もう、中間試
験前で追い込みですもんね。」とマズオ。そして、「今日も取引先と打ち合わせがありま
すから。」と言って、マズオはナビヘイと反対方向の電車に飛び乗った。

いつものようにマズオが若い女性と逢引を重ねている駅の反対側の南口ではワガメがフ
ァストフード店の店内で中年の男と会っていた。「おなかがすいただろう、何でも好き
な物を注文していいんだよ。」と男。「わあ、じゃああたしこれとこれとこれ!」とワガ
メは言った。「そうか、よしよし。じゃあおじさんはこれにしようかな。ワガメちゃん
注文してきてくれるかい?」と男。ワガメが注文し終えて帰ってくると男はカバンから
リボンのついた箱を取り出して、ワガメの前にそっとおいた。「開けてごらん。」「何だ
ろう、わあー、ステキー!私こういうのが欲しかったんだ!」とワガメは箱からワンピ
ースを取り出して顔を輝かせた。「ワガメちゃんにきて欲しいんだ。」と男。「ええー!
いいのー?おじさん、ありがとう!」とワガメ。そして、2人は朝食を終えると店から
出て、街の中へ消えて行った。

そしてその日の夕方、その男はワガメと待ちあわせた駅の南口の地下にあるバーに入っ
て行った。「こんなもんでいいのかな?」と男はカウンターに座ってバーボンを飲んで
いる坊主頭の男に言った。「ああ、上等さ。」と坊主頭の男が答えた。そして、坊主頭の
男は半ズボンの尻ポケットから万札が入った封筒を取り出し、横に座った男の前にすっ
と差し出した。男はその封筒の中身を確認してから「確かに。いつもこんなにもらって
悪いねえ。」と言った。「なあに、安いもんさ。奴らが俺に払う代償に比べればな。」そ
う言って坊主頭の男はくっくっくと笑った。「代償?」そう男が坊主頭の男に尋ねると、
「いや、何でもないんだ。こっちのことだよ。」と言って、カウンターの奥にいるマスタ
ーに「じゃあ、これ、この人の分も。」と言って、万札をカウンターの上に差し出した。
「釣りはいらないよ。じゃあ、行こうか。」「ニャーオ。」そう言って、坊主頭の男はく
っくっくと笑いながらバーを出て行った。

投稿者 nekoyama : 06:17 PM