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March 14, 2003

超長編大河小説 リアリスティックザサエさんその7

幸せな家庭の姿というのは大体みんな同じだが、不幸な家庭の姿は
それぞれに全部違う。(トルストイ)

やあ、僕ねこ山。
数々の問題が勃発している最中のイゾノ家であるが、そのイゾノ家
もいよいよ最終段階へ突入しようとしていた。

ナビヘイは家を飛び出して以来、公園で寝起きをするようになって
いた。その公園にはすでにホームレスのヒエラルキーが確立されて
おり、いかに以前一家の長であったナビヘイと言えどもここでは単
なる使いっ走りであった。その日もナビヘイはホームレス仲間から
コンビニで菓子パンとジュースを万引きをしてくるように命令され
てとぼとぼと近所のセ○ンイレブンに向かっていた。その道の途中、
橋の上でふと立ち止まったナビヘイは橋の下を流れる川に眼を向け
た。ナビヘイには帰るところもなかった。寒さをしのぐために公園
で寝ようとすれば前からいたホームレスたちの奴隷として生きてい
かなければならない。自分はもう生きていてもしようがない。そう
考えたナビヘイは無意識のうちに橋の欄干に登ろうとした。

その日マズオがいつものように会社の帰りにアルバイトの女性と食
事をしているとき、その女性が奥さんと別れて自分と結婚してほし
いと言い出した。突然のこニに唖然としたマズオはちょっと待って
くれと言ったが、彼女は逆上して、今からマズオの家に行って家族
に自分たちのことを洗いざらいぶちまけると言って店を飛び出した。
マズオは慌てて後を追おうとしたが、店員につかまり会計をさせら
れ彼女を見失ってしまった。もう間に合わない。家路をとぼとぼと
歩きながらマズオは考えていた。今夜家に帰れば家族のみんなから
不貞を責められ、ガツオみたくリンチを受けるのは間違いない。マ
ズオは婿養子で立場はガツオと同等で家族の中では最下位であった。
もう家には帰れない。かと言って他に行くところもない。そう考え
ながらマズオは無意識のうちに会社に戻り、屋上へ出ていた。もう
自分は生きていてもしようがない。あの時、イゾノ家に婿養子に来
たのがそもそもの間違いだったんだ。風呂はいつも最後。給料はイ
ゾノ家に没収され、小遣いは月500円。しかも自分の居場所すらな
い。いつも居間の隅でイゾノ家の連中に愛想笑いをふりまくのが関
の山だった。もうこんな生活は終わりにしよう。マズオは屋上の柵
に足をかけた。

その日ワガメが学校へ行くと、自分の下駄箱の中に封筒を見つけた。
なんだろうと思って、中身を取り出すと、一枚の手紙と写真が数枚
入っていた。その写真は全てワガメがパパと天神の繁華街を腕を組
んで歩いている写真であった。そして手紙にはワガメの秘密を学校
と家族にバラすと書いてあった。ワガメの膝がガクガク震えだした。
そしてその写真と手紙を握りしめたまま、学校を飛び出した。もう
みんなにバレている。どうしよう。もう学校へは行けない。家にも
帰れない。そう考えながらワガメは遮断機が降りてカンカンと鳴っ
ている踏み切りの前まで来ていた。死ねばいいんだ。そう考えたワ
ガメは遮断機を乗り越えようとした。

その日もザサエは090金融から借りた金でブランド物を買いに天神
まで来ていた。そして岩田屋で服を物色していたとき、後ろから腕
をつかまれた。「やっと見つけましたよ、奥さん。」ザサエはおそる
おそる振り向いた。するとそこには東京で金を借りて返さずに逃げ
てきた消費者金融の営業マンが不敵な笑みを浮かべながら立ってい
た。もちろんザサエの腕を固くつかんで離そうとしない。「さあ、事
務所まで来てもらいましょうか、奥さん。」と男がザサエの腕を引っ
張った。その瞬間、「誰かぁー、助けてぇー!!泥棒!!」とザサエ
が叫ぶと買い物客が一斉に振り向いた。そして警備員が駆けつけてき
て営業マンを取り押さえた。その隙をついてザサエは男の腕をふりほ
どき、屋上まで逃げた。見つかってしまった。もうだめだ。家の住所
も分かっているに違いない。家に帰ってもその前で捕まって事務所に
連れて行かれる。そしてドラム缶に詰め込まれて東京湾に突き落とさ
れるんだ。そう考えながらザサエは震えがとまらなかった。どうせつ
かまるくらいなら・・・。そう思ったザサエは無意識のうちに屋上の手す
りから身を乗り出した。

その頃家ではブネが酒の配達を待っていた。しかし、いつもの時間
を過ぎてもザブちゃんはやってこない。一時間がすぎ、二時間がす
ぎた。家にはもうアルコールは一滴たりとも残っていない。手が震
えだした。ついに禁断症状があらわれたのだ。酒を買いに行く金も
ない。ブネは居間でのたうちまわった。苦しさのあまり壁にもたれ
かかると、突然その壁が溶け始め、天井が崩れだした。崩れ落ちた
天井の上から何千匹というムカデが落ちてきた。「ウギャーッ!!」
ブネはついに幻覚を見始め、近くにあった椅子で家の中を手当たり
次第に破壊し始めた。それでもムカデはブネに迫ってくる。「ヒィー
ッ!!」ブネは玄関からはだしで飛び出した。そしてわき目も振ら
ずに走り大通りの交差点に差し掛かったとき、右のほうからものす
ごいスピードでクラクションを鳴らしながらダンプが突っ込んできた。

投稿者 nekoyama : March 14, 2003 06:30 PM